VOY@GERに関する所感

「Vは下唇を噛み弾く様にして発音します。正面と横方から私が発音するのをよく見ておいてください。」
北野正念龍(キタノジェネラル)Pは教育実習初日ということで張り切っていたが、いきなり出鼻を挫かれてしまった。
 最前列で堂々とデレステをしている生徒がいて注意をしようとしたがそれ以上に目を引く生徒がいた。後方窓際に座る生徒は左で頬杖をつき徐にアイドルマスター16周年楽曲のVOY@GERに夢中になっている。また、右手でiTunesカードを削りデレステに課金しながら左足のみで空気椅子をしている。
「えーと古賀時雨さん、君はそんなに私の授業が退屈かね?」
古賀はこちらを一切見ずに答えた。
「先生の授業は退屈ですよ。Vの発音なんて何でいろんな角度から見る必要があるんですか。」
 北野は中学生相手に怒りを覚えてしまったことを非常に情けなく思った。個性を重んじる教育、一人一人が自分らしさを発揮できるような教育者になりたいという自信の教育者としての野望は、実は薄っぺらい理想のような気がしてしまった。しかし、まだ教育者の卵であるので態度に出さないようにすれば、後にこの様な生徒に対しても本気でそれが個性であると思えるようになれば、私はまだ教育者としてあり続けられるだろう、そのように考えなるべく優しく諭すように言った。
「そんなに気になるのなら廃人のようにイベントに参加してきなさい。」
少し嫌味を含んだ言い方になってしまったことを後ろめたく思う暇もなく、古賀は動いた。
「ありがとうございまーす。」
その瞬間、本当に無人惑星探査機ボイジャーとなって飛び去ってしまった。
何が起きたのか理解できず、慌てて窓の外を見た。時が止まったかのような静けさに違和感を感じたが、VOY@GERを踊りながら元気に走り去っていく様子に全てがどうでもよくなった。
「それでは正面から私がVを発音するのをよく見ておいてください。」自身の内なる修羅が呼び起こされているのを感じながら、どこぞのお笑い芸人のように、どう猛なライオンのように、そして地獄の番人のような形相で勢いよくのどを鳴らした。
「それでは聞いてください。VOY@GER」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この空の向こう側には
どんな世界が待ってるの?」
溢れ出した胸の鼓動で
眠れない夜に

水平線の向こうの方へ
流星を追って伸ばした手
さぁ、立ち上がって走り出したら
旅に出よう、私と
遠くまで遠くまで
輝きを追いかけて

好奇心のライト灯して
君と描いた旅路をゆこう
溢れ出した胸の鼓動を
加速装置に乗って

星屑みたいな可能性から
星座を繋いだ道標
迷いも不安も今はないよ
振り返る輝跡

夜空の瞬き 今確かに
指をかすめたきらめき
準備はできている 君も私も
飛び出そうよ さらに

キラキラなんて言葉じゃまだ足りない
星よりももっと眩しく
アイは時代を未来を拓く光になる
なれるから

その目を離さないで
私と行こう、今
限りない願い抱いて

飴色のレコード鳴らす
歌うように星が揺れる
溢れ出した胸の鼓動の
リズムに乗っかって

木星の雲 ステップ踏んで
土星の輪っか ステージにして
いつかみた流星を追い越して
君を連れてくよ
輝きの先

We are the trabelers
太陽系を今旅立つ
僕らはそう光になる
思考自体変わるぐらい
まばゆい世界届けたい
Across the Universe
星の海を切り開く
アイがほらじきに
巻き起こすさシンギュラリティ

何億光年だって
君となら行ける、きっと
無謀な夢を見て、叶えたいよ全部
銀河を超えて(もっと遠くへ)
宇宙を超えた先へ

I must go 君と見た夢の続き
I must show 君を連れて行く光
I must see 誰もまだ知らない先
君のアイが私を照らしてくれるなら

無限大なんて言葉じゃまだ足りない
君とならもっと遠くまで
アイは時間も次元も超える光になる
見ていてね

君と確かめに行こう
輝きの先まで
果てしない希望の中へ

水平線の向こうの方へ
流星を追って伸ばした手
さぁ、立ち上がって走り出したら
旅に出よう、君と
遠く遠くまで